はじめに
1980年代、農村部では農産物の生産性の向上や、郷鎮企業の成功に伴って豊かになる人々が増加しました。しかし、こうした傾向は長くは続きませんでした。1989年以降、再び都市と農村の間の格差が拡大し始める事になるのです。
今回は都市と農村間の不平等が1990年代に再び広がる原因となった1989年の天安門事件の背景について見て行きます。
1980年代における農村収入の急激な上昇
まず、改革開放直後の1980年代、農村部で起きた農業の近代化や郷鎮企業の出現などの様々な改革によって農村収入がどのように上昇したかを解説しましょう。重要なのは、こうした改革は農村に住む人々に偏って利益をもたらしたという事です。それまで(1978年末の改革開放開始まで)の都市との格差を狭める為に政府も政策として農村を豊かにしようとしていた事が窺えます。
郷鎮企業は製造業なので、農村労働者がそこで働けば農外所得(農業以外で得られる所得)を得られます。1980年代はこの郷鎮企業での雇用機会が急激に上昇しました。一方で、農夫達が作る農産物の価格も同様に目覚ましく上昇します。
つまり当時の農村では製造業と農業の両方で収入の上昇が見られたという事です。これらの結果として農村の収入は都市の収入よりも速く上昇したのです。
しかし1980年代に起きたこうした農村部における収入の上昇も長くは続きませんでした。もちろんこうした農村部の成功は、それ以前の数十年間、都市部が受けて来たひいきを矯正する為に必要だったでしょう。1970年代終盤、農村部に蔓延していた貧困を思えばそれは当然です。
長くは続かなかった農村部の成功
しかし1980年代に起きたこうした農村部における収入の上昇も長くは続きませんでした。もちろんこうした農村部の成功は、それ以前の数十年間、都市部が受けて来たひいきを矯正する為に必要だったでしょう。1970年代終盤、農村部に蔓延していた貧困を思えばそれは当然です。
ところが、こうした農村へ恩恵を与え続ける状況を打ち破るように1989年に政治混乱が起きます。あの有名な天安門事件もその一部です。主にこの混乱を境に、中国の経済改革は1980年代の農村重点型から1990年代の都市重点型のものに変わってしまいます。
天安門事件の直前、1989年春に北京の天安門広場やその他の中国の都市では生活に困窮した若者などを中心としてデモ行進が行われていました。何故この様な事が起きていたのか、その時代背景を見てみましょう。
天安門事件が起きた時代背景
天安門事件の直前、1989年春に北京の天安門広場やその他の中国の都市では生活に困窮した若者などを中心としてデモ行進が行われていました。何故この様な事が起きていたのか、その時代背景を見てみましょう。
そもそも1980年代というのは、政治システムに大きな変革をもたらそうとする人々の熱意と活気に満ちた時代でした。若者を中心に中国各地で政治についての議論がなされており、政府もそれを容認していました。中央政府は政治改革を研究する為の職場まで用意して、そうした議論・研究がなされる事を歓迎していたのです。それはひとえにより豊かになる為でしょう。都市部といっても当時の中国は近代的な豊かさには遠く及んでいなかったのです。
改革開放から十年余りが経って、今の政治システムではいけないと言う事に中国の人々、特に学生や学者達が真剣に気付き始めたのです。
欧米や日本との間の格差に気付いた学生や学者達
1980年代、中国の学生や学者達のそうした政治改革への熱意に火をつけたのが、彼らが海外旅行を通してアメリカ合衆国やヨーロッパ、そして近場では日本や香港と言う豊かな国々の高い生活水準や、その外国に開けた自由主義の開放的な空気を目の当たりにした事でした。彼らはきっと「自分達もこうなりたい」と思った事でしょう。1980年代に、1949年の革命以来初めて、彼らは大勢で海外を旅行し始めこうした実態に気付いたのです。”豊かさ”についてのおよそ30年間の空白があったということでしょう。
それまで閉鎖的な中国で生きてきた将来有望な若い学生や学者達は、こうして外国と中国との経済的・思想的な格差に気付き、本格的に政治を変えなければならないと思う様になったのです。
今回は1980年代の農村経済の目覚ましい成功と、それを終わらせる事になった1989年の政治混乱の背景について見ていきました。
まとめ
今回は1980年代の農村経済の目覚ましい成功と、それを終わらせる事になった1989年の政治混乱の背景について見ていきました。
1980年代は都市部の若者、特に学生や学者達にとっては中国が海外に比べて如何に経済的・思想的に貧しいかに彼らが気付き、政治を変革する事に強い関心を持った時期だったのです。
そして中国はここから再び都市重点型の改革に移行していくことになります。都市部の近代化が本格的に進むのです。


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