2020年10月19日月曜日

習近平政権と公営住宅建設、およびアジア通貨危機以降の国営高速道路の建設




はじめに

 中国では1998年の住宅民営化から住宅市場がブームになっています。そしてそれはどうやらアメリカ合宿国が2007年に経験したような住宅バブルではなく、今後も堅実さを維持するものと考えられています。
 しかし一見安定している中国の住宅市場にも大きな問題があります。それが住宅市場が二層に分断されているという中国特有の状態です。この二層の内、一方は供給過剰になっている高所得者向けの高級住宅市場、もう一方は供給不足が問題になっている移住者・低所得者向けの低価格住宅市場です。こうした問題を意識し始めた中国政府は解決策としてより高い頭金やローン利率の設定などを通じて高級住宅の購入規制を強めたり、低所得者向けの公営住宅建設計画を地方に命令したりしました。
 しかしこうした対策もほとんどうまく行きませんでした。公営住宅建設計画については、地方では作りのもろい不良マンション・アパートが適当に増築されるだけでしたし、上海などの大都市では逆に高所得者向けのスラム住宅のリフォーム事業が活発になりました。
 今回は今後中国において公営住宅を含めた低所得者向け住宅が増築される見込みがどれ位あるか、また中国において住宅建設と親戚関係にあるインフラ建設はどれ位活発に進められてきたのかを見て行きます。

中国における今後の低所得者向け住宅支援

 次の10年間で、中国政府からの低所得者向け住宅への直接の助成金や抵当保証を通じての間接的な援助はかなり進むと見込まれています。アメリカ合衆国では連邦住宅抵当金庫が抵当保証を行っていますが、これと同じ事が中国でも行われるという事です。
 これらが上手く進めば、近い将来、低所得者でも助成金を得て比較的低価格で住宅を購入できる様になるでしょうし、住宅ローンを組む場合でも、抵当保証があるのでもし入居者がローンを返済できない状態になっても自分達の住んでいる住宅を担保にとってもらう事で自己破産のリスクを回避出来るようになるでしょう。
 ただ、習近平政権は中国経済において市場原理こそが強く働くべきだと考えているので、こうした政府による公的な住宅支援政策と言うのはある意味中央政府との間に緊張を生むものかもしれません。

改革初期のインフラ建設

 話を40年ほど前に戻します。
 中国では1978年末に改革開放が始まり、本格的に経済が改革されていきます。これに伴って都市化が進み、農村から都市へ労働者が次々に流れ込み、彼らが住む為の住居や寮の建設、またその中での生活を可能にするためのインフラ建設への需要が急激に高まります。こうしてインフラ支出ブームが起きるようになったのです。
 中国が改革時代の初めの20年間に重点的に行ったインフラ投資は、主に道路や港と言った陸、海の輸送網および電線などの通信ネットワークに対するものでした。

アジア通貨危機への対応としての1998年の財政刺激策

 1997年からタイを中心にアジア各国の通貨価値が下落した、いわゆるアジア通貨危機が起きます。中国政府はこの対応として1998年に財政刺激策を発動します。その主要項目は特別債を発行する事によって得られた融資をインフラ建設に充てる事でした。アジア通貨危機という逆境が中国のインフラ建設への投資を活性化させたのです。
 考えてみれば1998年と言うのは住宅民営化が始まった年でもあり、その後住宅建設件数が急激に増加し始める契機となった年です。住宅への需要が高まっていくと言う背景の中でそれとセットの事業であるインフラ建設への投資が盛んになって行ったのですね。

国営高速道路の建設

 1998年に中国でアジア通貨危機を乗り越える策として打ち出された財政刺激策の中で、インフラ建設への投資が主要な項目でした。
 では実際にどの様な種類のインフラが建設される様になったのでしょうか?
 主な費目としてアメリカ合衆国の州間高速道路システムをモデルにした国営高速道路網を中国国内に建設する事がありました。この計画は見事に成功しました。
 1997年には5,000キロメートル足らずしかなかったこの国営高速道路は7年後の2014年には20倍以上の総延長の112,000キロメートルにまで達しました。これはアメリカ合衆国の州間高速道路システムのおよそ1.5倍に相当する長さです。
 他のインフラ建設計画もこの国営高速道路網の建設に続いて次々に実現されていく事になります。

まとめ

 中国の住宅問題である公営住宅建設が今後どのくらい進む見込みがあるか、そして住宅建設と近しい事業であるインフラ建設が改革開放以降具体的にどの様に進められてきたかを見てきました。
 現政権である習近平政権は市場原理を中国経済の主役に据えたいと考えている事から、政府による低所得者向け公営住宅への支援は中央政府との間にある種の緊張状態を生みかねない事が分かりました。
 また中国では改革初期の20年(1978年~1998年)で都市化と共に、道路、港、通信ネットワークなどのインフラ建設が重点的に行われてきました。そして1997年のアジア通貨危機を境に、財政刺激策の一つとして大陸内輸送における重要なインフラである国営高速道路網が建設される事になり、2014年までにアメリカ合衆国の州間高速道路の1.5倍の規模にまで建設が進みました。
 そして他の種類の大規模インフラもこれに続いて次々に建設されるようになって行きました。これについてはまた次回以降お伝えしますね。






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