はじめに
中国の都市住宅市場は2003年に都市戸籍を持つ都市世帯に完全な財産権が与えられてから急激に成長する事になりました。この財産権によって、彼ら都市家族は利益目的で自由に不動産を売買できるようになったのです。自由市場における住宅価格の上昇はほんの数年前に購入した不動産を売却する事でこうした都市家族に莫大な利益をもたらしました。
そして中国におけるこうした住宅ブームはどうやらバブルでは無く、崩壊する兆しを見せる事もありません。それを可能にしているのが地方政府による売れ余った住宅の低価格の公営住宅としての再販、中央政府の市場介入による価格抑制、また住宅購入時の比較的高い頭金の設定などでした。
この様にきちんとした監視と政策の下で賑わっている中国の都市住宅市場は堅実である様に思えますが、実際には大きな問題を抱えています。それが高所得者向け高級住宅と移住者や低所得者向けの低級住宅の二層に分かれた住宅市場システムの構造です。この構造は中国の住宅民営化の名残とも言えます。
今回はこの“二層問題”に政府がどの様に対応しているのかについて見ていきます。
高所得者向けの層(第一の層)とは
まず、二つの層に分かれた中国の住宅市場システムの内、高所得者向けの高級住宅の層がどの様なものなのかを見てみましょう。
この層は1998年からの住宅民営化のおかげで比較的高価な住宅を政府からの支援や格安の政府設定価格を利用して簡単に購入できた恵まれた人々の層です。もちろん、彼らがこうして購入した住宅を後に市場価格で売却する事で莫大な利益を得ることが出来た事も忘れてはいけません。そしてこの層はもう一方の低価格の住宅層に比べてより市場原理的に営まれている層でもあります。住宅価格の上昇が日々起きている市場という事です。
中国都市部の一等クラスの人々がこの層の客であり、彼らは自分達の家をより高級なものにアップグレードする為に新たに家を購入する様な高収入で裕福な人達です。
この高級住宅層は慢性的な住宅供給過剰にあると言う事が出来ます。と言うのも、これら高級住宅団地が建てられる土地を管理・支配していた中国の都市政府が、自分達が利益を得るために高級な住宅団地の建設を促進する事にあまりにも熱心になり過ぎていたからです。都市政府が住宅団地用の土地を支配していたという事は、勿論、その住宅が売れればその都市政府に大きな利益が入る事になります。結局、都市政府の役人達が自分達が豊かになる事を目的に、不必要に大量に住宅団地が建設されていったのです。
移住者・低所得者向けの層(第二の層)とは
前項で述べた高級住宅の層に対して、移住者(或いは出稼ぎ労働者)や収入が低すぎて公開市場価格ではとても住宅を購入できない様な家族の需要に対応しているのが、中国の住宅市場システムの内、手頃住宅(比較的低価格な住宅)の層です。第二の層と言っていいでしょう。 この層の客は住宅民営化の際に、都市戸籍を持たなかった事や十分な貯金が無かった事などを理由に不動産市場にうまく参入できなかった、不幸な世帯の人々です。前項で述べた恵まれた世帯が格安の内部価格で住宅を購入し、自由市場の高価格でそれを売却して莫大な利益を得ている時に、この層の世帯は苦労して溜めた僅かな貯金をはたいて公開市場価格の高い住宅を購入しなければなりませんでした。 そしてこの第二の層を構成している手頃住宅は供給不足に悩まされており、この事が移住者や低所得者にとって大きな問題になっています。これらの層の人々は主に農村出身者などの低所得者であり、その為数が多いので、手頃価格の住宅には大きな需要があるにもかかわらず、供給が不足しているのですから、これは当然ですね。
中国の中央政府は、高所得者向けの高級住宅の供給過剰と低所得者向けの手頃な住宅の供給不足の問題を2007年頃に特定し始め、2010年までにはこの問題を解決するための一式の政策を用意していました。
政府による高級住宅層(第一の層)の問題解決
中国の中央政府は、高所得者向けの高級住宅の供給過剰と低所得者向けの手頃な住宅の供給不足の問題を2007年頃に特定し始め、2010年までにはこの問題を解決するための一式の政策を用意していました。
まず高級住宅の供給過剰についてどの様に問題を解決しようとしたか見ていきましょう。政府はまず住宅購入の際のより高い頭金の設定をしました。それまで持家住宅については頭金は最低20%とされていましたから、これより高く、つまり30%や40%の頭金に設定し直したという事です。一方の投資用不動産(持ち主が住む以外の利益目的の家)についてはそれまで頭金は60~70%でしたから、これより高く、つまり80~90%に再設定されたという事でしょう。
また、政府は住宅ローンの利率(分割で支払っていく際に利息として原価に上乗せする分の代金)についてもより高く設定しました。
さらに、一人の人が購入できる不動産の数についても制限を設けるようになったのです。一人が投資用住宅を3つも4つも購入する様な事は出来なくなったという事でしょう。
これらの厳格な制限によって、高級不動産への需要を鈍化させ、それによって住宅価格を引き下げ、また不動産開発者がこうした高級住宅をそれ以上多く建てる事を妨げようとしたのです。
政府の政策の第二部は勿論、先述した低所得者向けの手頃な価格の住宅の供給を増加させる事です。具体的にはこれは大規模な公営住宅を建設する計画です。この計画では、政府による様々な刺激策や助成金を通して低所得者向けの手頃住宅の供給量を増やす事を目的としています。不動産開発業者に政府が様々な優遇措置を施す事で低価格の公営住宅の建設を促進するという事ですね。
中国の住宅システムが高級住宅の層と低価格住宅の層に二分されてしまっていると言う問題に焦点を当て、中国政府がこの問題にどのように取り組んできたかを見てきました。
政府による手頃住宅層(第二の層)の問題解決
政府の政策の第二部は勿論、先述した低所得者向けの手頃な価格の住宅の供給を増加させる事です。具体的にはこれは大規模な公営住宅を建設する計画です。この計画では、政府による様々な刺激策や助成金を通して低所得者向けの手頃住宅の供給量を増やす事を目的としています。不動産開発業者に政府が様々な優遇措置を施す事で低価格の公営住宅の建設を促進するという事ですね。
まとめ
中国の住宅システムが高級住宅の層と低価格住宅の層に二分されてしまっていると言う問題に焦点を当て、中国政府がこの問題にどのように取り組んできたかを見てきました。
まず第一の層である高級住宅層では住宅の供給過剰が起きていました。それを解決するために政府は住宅購入の際の頭金やローンの利率を引き上げたり、一人当たりの購入可能物件数に制限を設けたりしました。
また第二の層である低所得者向けの手頃住宅層では逆に供給不足が問題になっていました。そこで政府は大規模な低価格の公営住宅の建設計画を立てました。
こうして住宅システムの両方の層、つまり高所得者向けの層と低所得者向けの層における問題をそれぞれ解決しようとしたのです。
こうした政策がうまく行ったかどうかについてはまた次回以降見ていきたいと思います。重要なのは、数の多い低所得者向けの住宅が供給不足で、数の少ない筈の高所得者向けの住宅が供給過剰であると言う逆説的な中国の住宅市場の状況です。


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