2020年7月15日水曜日

都市化と経済成長の関係




はじめに

 今回は1979年の改革開放以降、中国で本格的に進んだ都市化に伴う経済発展の様子を見ていきます。経済発展と言うと、地方から都市部に人が移住したり、都市部での雇用が生まれたりという事が想像できそうですが、それは具体的にどのような過程なのでしょうか。一般に経済発展には三段階あり、中国もこれらの段階を経て現在の近代的な都市国家に成長しました。各段階がどのような物だったのか見ていきましょう。


磁石効果の段階

 一般に、経済が産業型の近代化された経済になると、農産物に比べて付加価値の高い物を製造する場所である工場が都市周辺或いは都市内部に出来るようになります。こうした工場は地方で自給自足農業で働く人々が得る事ができる収入よりも高い賃金をもたらします。産業化の初期には、労働者はまだ農業で自給自足の様な生活をしていますから、こうした工場の比較的高賃金が彼らにとっては非常に魅力的になります。
 そこで彼ら農業労働者は農業を止め、都市部或いはその周辺に移住して工場で働くようになります。まるで磁石が砂鉄を引き付けるようなこの現象を都市化の第一段階 ”磁石効果の段階”と呼ぶ事にしましょう。 近代的な工場で働けば、それは伝統的な農業で働く場合よりも生産性が高いです。従って地方の農業中心の経済から都市部の産業型の近代的な経済へ労働者が大量に流れる事は、その国の急速な経済成長へ大いに貢献するのです。

建設ラッシュの段階

 そしてこの都市化がある程度まで進むと、それ以降は都市化に伴う建設事業が経済成長に直接貢献するようになります。その経済規模は決して小さなものではありません。ちなみにここで言う建設事業とは主に住居やインフラの建設の事です。この都市化の段階の事を第二段階である”建設ラッシュの段階”と呼びましょう。
 地方から都市部の工場に大量に労働者が詰めかける様になると、彼らの生活の為に当然、住居や道路、上下水道、電気、電信サービスの整備が必要になります。こうした住居やインフラの建設には新たな労働者が必要になりますので、そこに雇用が生まれます。また、同時に建設資材である鋼鉄、セメント、ガラス、アルミニウム、銅などの需要も大量に発生する事になります。この様にして都市化自体が経済成長を促進するようになるのです。
 しかし生産性という観点で見ると、この”建設ラッシュの段階”は”磁石効果の段階”ほど効果がありません。建設事業が増えても、それよって生産性の向上が起きる事はあまりない訳です。何故ならそうした仕事をするのは従来も建設の仕事をしていた人達だからです。つまり労働の質が変わらないんですね。逆に先述の”磁石効果の段階”では大量の労働者が地方から都市に流れ込み、そこで今までと異なる付加価値の高い物づくりに従事するようになるから生産性が大きく上昇します。これらの事から経済成長という意味ではこの第二段階は第一段階よりも質が低い事に注意しなければなりません。 
 それでも暫くの間はこの住居、インフラの建設が投資率(利回り)やそれによるGDP成長を押し上げてくれます。

スマート・シティの段階

 ”建設ラッシュの段階”を経て一度都市に近代的なインフラが整備されれば、それらの都市はまるで人体で言うところの心臓のように、生命力を外へ向けて送り出す経済の一大中継地になるでしょう。何故なら整備された都市に高度な技術を持った労働者が集まり、その高密度な集合がいつしか特定の産業における知的なネットワークを形成し、そうした”特化”によってその都市の生産性を一層高めるからです。  知的ネットワークが形成された都市という事でこの第三段階を”スマート・シティの段階”と呼んでもいいでしょう。
 このスマート・シティについて具体的な例を見ていきましょう。 ロンドンやニューヨークは金融に特化した都市です。 ロサンゼルスなら娯楽に特化した都市と言えます。 サンフランシスコからサンノゼまでのシリコンバレーなら技術に特化していると言えるでしょう。全世界の経済成長も大半はこうした”知的な”都市から生み出されているのです。

まとめ

 都市化について三つの段階を見てきました。中国の改革時代のはじめの20年、つまり1979年から1999年に起きた都市化はこれらの内”磁石効果の段階”に該当します。 この時期、中国の農村から都市部へ多くの労働者が移住し、工場で働くようになりましたが、それによる収入はまだ低く、住居も工場や会社の寮に住む事が多かったそうです。







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