はじめに
今回は中国の都市化が一般的な都市化の三段階、つまり”都市への人材引き寄せ効果(磁石効果)の段階”、”建設ラッシュの段階”、”スマート・シティの段階”をどのように経験してきたのかを見ていきます。
1979年~1999年:工場労働の本格化
中国の改革開放時代におけるはじめの20年間、つまり1979年から1999年に起きた都市化は、農村から都市の工場に労働者が流れ込む段階である”磁石効果の段階”に該当します。この時期、農村部で自給自足農業で暮らしていた多くの労働者が農業から離れ、都市部へ移住して工場で働くようになりました。仕事が変わる事で彼らの収入は上昇したでしょうが、先進国のレベルに比べればそれはまだまだ低いものでした。また彼らの住居も主に工場またはその会社の寮でした。
しかし、伝統農業から近代的な工業に仕事の場を移したこの労働者達の生産性が大きく向上した事は間違いありません。そして現に当時の中国の経済成長に貢献していたのは主に彼ら移住労働者達のこの”一大転職”による生産性の向上でした。実際にこれが1979年から1997年までのGDPの増加分の1/5もを占めていたのです。
1998年以降、中国の都市化はその第二段階である”建設ラッシュ段階”に入ります。その背景を説明しましょう。
1998年~2013年:住宅、インフラの建設ラッシュ
1998年以降、中国の都市化はその第二段階である”建設ラッシュ段階”に入ります。その背景を説明しましょう。
まず第一に1990年代に入って以降、中国では海外直接投資(FDI)導入などの経済改革による都市部での本格的な雇用の増加がありました。またそうした雇用を求める移住労働者達を規制する法律を中国政府が暗黙の内に緩和していました。その結果、農村から都市への労働者の移動が比較的容易に起きるようになったのです。実際に、都市人口の平均年間増加数は1978年~1998年の間では約1,200万人だったのが、1998年から2013年の間ではおよそ2,100万人にまで増えたのでした。都市部人口がこうして増加すれば、そこに住む人の住居、インフラの需要が高まります。
そして第二の背景として、1990年代後半の都市部における住宅市場の民営化がありました。それまで国家によって所有・管理されていた都市部の住居が解放され、都市部の一般個人が自由に不動産を売買できる状態が整ったのです。これにより、都市家庭による住宅需要が高まりました。この住宅市場民営化によって空前の住宅建設ラッシュが起きる事になります。それは世界中の歴史を見渡しても前例の無い規模のものでした。
そして第三の背景として1998年以降中国政府が都市に住む人々の生活基盤となるインフラの建設を国策として支援するようになったことがあります。ではこのインフラとは具体的にどのような物だったのでしょうか?具体的には仕事を求めて都市へ向かおうとする人々の移動を便利にする為の都市間高速道路や鉄道がありました。これによって農村から都市へのアクセスが容易になり、先述したように都市部への人口流入が一層促進されました。その他にも都市部の道路、地下鉄、浄水場などの建設が加速し、都市の機能をより高度なものに変貌させていきました。
しかしこうした一連の建設ラッシュも近年の中国では徐々にかげりを見せ始めています。住宅の年間竣工数で言えば、1998年から2013年の間には3倍に増加しましたが、今ではそれはもはやピークを過ぎており、高い水準を維持できるのはせいぜい後数年で、徐々に下降線を辿る事になると考えられています。住宅建設がほぼ飽和状態なのですから、それと親戚関係であるインフラ建設についても恐らく同様でしょう。
2013年以降:建設ラッシュの終焉と先端都市(スマート・シティ)化への展望
しかしこうした一連の建設ラッシュも近年の中国では徐々にかげりを見せ始めています。住宅の年間竣工数で言えば、1998年から2013年の間には3倍に増加しましたが、今ではそれはもはやピークを過ぎており、高い水準を維持できるのはせいぜい後数年で、徐々に下降線を辿る事になると考えられています。住宅建設がほぼ飽和状態なのですから、それと親戚関係であるインフラ建設についても恐らく同様でしょう。
もちろん、これからもまだ都市部への人口流入はあるでしょうから、ある程度の住宅、インフラに対する需要は継続するでしょうが、だからと言ってこれ以上それらの建設数が増加する必要はもはやなく、年間建設量が下がってもそのレベルで十分需要を満たす事ができるという事です。
この事から、今までと同様に住宅やインフラの建設に注力するだけではもはや中国の経済成長を促す事は出来ないと考えられます。この問題を克服する為には、中国が現在抱える都市群がニューヨーク(金融に特化した都市)やロサンゼルス(娯楽に特化した都市)、シリコンバレー(IT産業に特化した都市)に代表されるようなスマート・シティ、即ち特定の産業分野に秀でた革新的技術を備えた先端都市にならなければならないでしょう。つまり都市化の第三段階である”スマート・シティ段階”への移項が現在の中国の課題なのです。
改革開放からの35年間に都市部で何が起きたのかを見てきました。まず1979年からの都市部での工場労働者の急激な増加、それによる経済成長の加速が起きました。そしてその後1998年から都市部での建設ラッシュが起きます。そして現在、中国の都市はその完成形であるスマート・シティ化を目指して従来の物量による建設型発展の段階から抜け出しつつあります。今度は都市の技術力を研ぎ澄ます”内なる発展”に注力している事でしょう。
まとめ
改革開放からの35年間に都市部で何が起きたのかを見てきました。まず1979年からの都市部での工場労働者の急激な増加、それによる経済成長の加速が起きました。そしてその後1998年から都市部での建設ラッシュが起きます。そして現在、中国の都市はその完成形であるスマート・シティ化を目指して従来の物量による建設型発展の段階から抜け出しつつあります。今度は都市の技術力を研ぎ澄ます”内なる発展”に注力している事でしょう。


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