2020年9月27日日曜日

中国の住宅市場が堅実と言える理由




はじめに

 中国都市部の住宅ブームは一見するとバブルの様に見えますが、実際にはこれをバブルと呼べるだけの根拠はありません。それは中国の住宅民営化が2000年代初頭にようやく実現されたため、市場における住宅の価格変動のデータがまだまだ乏しいという事も一因です。
 また2000年代から最近までの中国都市部の住宅購入の多くは、都市部家庭が不動産売買によって得た棚ぼた収益によってなされた場合も多く、アメリカ合衆国などの他国と違い、仕事によって得られた正規の収入と住宅価格の比率が不明瞭なのが中国の住宅市場の特徴です。
 今回は他国との比較が難しいやや特異な中国の住宅市場が具体的にどの様な根拠で堅実と言えるのかについて、データと共に見ていきます。

中国都市部の住宅価格の暴落は起きない

 2007年、言わずと知れた先進国であるアメリカ合衆国で住宅価格の急落によるいわゆるサブプライムローン問題が起きました。
 一方の中国の住宅市場と言うのは新興市場であり、一見向こう見ずな成長を続けている様にも思えますが、中国で都市戸籍を持つ家庭の住宅購入の大きな柱になっていたのが格安の政府設定価格による購入促進でした。なのでアメリカ合衆国などの完全な自由市場と単純に比較する事は難しいのです。つまりアメリカ合衆国の二の舞になってしまうなどとは決して簡単には言えないのです。
 中国都市部の住宅価格がいつ大暴落するかを予測しようとする事は、必然的に中国以外の国における住宅市場と中国の住宅市場を比較する事を要求しますので、結局は不可能だし、出来たとしてもあまり役に立たないのです。逆に、はっきりと中国の住宅価格は暴落しないと言い切るだけの根拠はあります。以下でそれらについて述べたいと思います。

中国の住宅購入者の収入の上昇と住宅購入の頭金の高さ

 中国都市部の住宅価格が暴落しそうもない事は、まず第一に住宅購入者達が非常に堅実な人たちである事からも分かります。彼らは特に大きな借金をしているという事も無く、過去十年間でその世帯収入は住宅価格よりも早く上昇してきました。そしてこの収入の高さに合わせて持家住宅(持ち主自身が住む住宅)購入の際の法的な頭金もある程度高く、20%と定められています。これによって自分の収入や財産と住宅価格とを比較せずに向こう見ずに住宅を購入する様な事は起きにくくなっているのです。
 また、中国のほとんどの都市では投資用不動産としての住宅購入の際には頭金として60~70%が定められているのです。従って余程金銭的に余裕が無ければ不動産投資などには手が出せない様になっているのです。
 さらに、2010年には中国政府は住宅価格の上昇を抑制しようとする事にも取り組み始めました。それ以降、通常のアパートの平均価格は平均世帯収入の9倍から7倍にまで落ち込んだのです。この7倍と言うのは日本や韓国、台湾などの東アジアでは普通の高さです。この様に政府が市場に簡単に介入できてしまう所が強いリーダーシップのある共産主義国家ならではの利点なのかもしれません。

アメリカ合衆国における頭金の低さとサブプライム問題

 サブプライム問題の当事国だったアメリカ合衆国では住宅購入の頭金は5%以下でした。頭金が5%という事は、金銭的に乏しい家庭でもローンを組んでかなり簡単に住宅を購入できたわけですが、その代わりに債務が95%もある事になります。その為、住宅価格が僅かでも下落すると住宅購入者の純資産(購入した住宅も含める)はこの巨大な債務によって圧し潰され、たちまち一文無しの状態に陥る危険がありました。
 この様に、実際にはとても住宅を購入できない様な収入層の人々がこの頭金の安さに魅せられ次々に住宅ローンに手を出して行き、住宅価格の暴落と共にローンが返済できなくなり破産する事になってしまったのが2000年代のアメリカ合衆国のケースだったのです。

今後も絶えない中国都市部の住宅需要

 中国の住宅価格が暴落しそうにないもう一つの理由として、今後も中国都市部で起こるであろう人口増加があります。次の15年から20年余りで2億人ほどの増加が起きるだろうと言われています。この2億人というのは外国から見れば国家規模の数ですが、14億もの人口を抱える中国では未だに全人口の半分が農村を含む地方に住んでいますから、そこから都市部への移住が起きる事を考えれば、この規模の人口増加はむしろ自然と言うべきなのです。
 これだけ大きく人口が増加すればそれが源となり、住宅に対する巨大な需要のパイプが確立される事になります。そうなればまた安定して住宅市場は存続できる事でしょう。

まとめ

 中国の住宅価格が暴落しないと言える理由を解説してきました。まず、住宅購入者達が経済的に堅実である事、そしてその世帯収入が住宅価格よりも早く上昇しているという事、またそれに合わせる様に住宅購入の際の頭金もアメリカ合衆国の場合に比べるとかなり高く設定してある事が分かりました。これによって中国の住宅市場がアメリカ合衆国のサブプライム問題の時の様な危うい住宅購入が生まれにくい市場環境である事が分かりました。
 また、2010年には中国政府による住宅価格抑制への介入もあり、どうやら政府がバブルにならない様にきちんと市場を監視し、価格をコントロールできている様でした。
 さらに、今後も都市部で起こるであろう人口増加が将来の都市住宅への需要を約束してくれている様でした。






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