2020年9月21日月曜日

胡錦濤政権の農村政策に対する世間の評価




はじめに

 中国で2003年に誕生した胡錦濤(こきんとう)政権は、1990年代に入ってから久しく停滞していた農村部の改革を再開します。
 胡錦濤政権は農産物の政府による買い上げ価格を引き上げる事で農夫たちの収入を増加させ、また農村における道路や水道などのインフラ整備を促進する事で農村をより住みやすい場所に作り変えたりしました。この様にして農村の生活を困難なものにしていたいわゆる農村三問題(農業、農村、農夫の問題)を解決しようと努めたのです。
 そして2006年以降、この政権の下で農村に住む人々もベーシックインカムや年金、健康保険を利用できるようになりました。2000年代、中国農村部ではこの様に近代的な社会サービスが次々に導入され、農村の生活が急激に改善されていったのです。
 今回はこうした胡錦濤政権の農村政策の成果が世間でどの様に評価されているのかを、絶対貧困率の改善など、その数値的な成果に焦点を当てて見ていきます。

2000年代半ばから始まった農村の生産高の向上

 1990年代に都市部の改革が進む一方で停滞を余儀なくされた農村の経済は2000年代半ばから再び活性化されます。農村における穀物の総生産高は1999年には年間5億トンだったのが2003年には4億3000万トンと大きく下落してしまいます。
 しかし2003年に胡錦濤政権になってから、再び上昇を見せるようになります。2013年には6億トンを超えるまでに上昇したのです。
 また、こうした農村政策の成功は農業的付加価値(生産や加工に手間をかけて高められた農産物の価値)にも反映されるようになります。1997年から2003年の間年間3%以下だった農業的付加価値の実質成長率は続く10年間で年間5%にまで加速する事になります。こうした成果よって農夫たちの収入も大きく改善されました。

胡錦濤政権へのマイナス評価

 農村部の生活を改善する事に成功した胡錦濤政権ですが、世間からはこうした政策に否定的な意見もあります。
 こうした意見は主に農村問題に無関心な都市部のエリート層のものですが、彼らは国家主席の胡錦濤と首相の温家宝は軟弱で無責任なリーダーであり、そのおかげで中国経済は2003年から2013年の10年間に渡って停滞したのだと主張するのです。彼らに言わせればこの10年は“無駄な10年間”だったという事です。
 都市部から見ればそう映るのかもしれませんが、農村に焦点を当てればこの政権の偉業は先述の様に輝かしいもので、農業生産高の下落を上昇に転じさせ、都市部と農村の両方における総合的な社会的セーフティーネット(義務教育無償化、ベーシックインカム、年金、健康保険など)を構築したのです。

胡錦濤政権へのプラス評価

 都市部を中心に胡錦濤政権を非難する人もいた事を前項で解説しました。ここからは恐らく誰もが共通して高く評価するであろう胡錦濤政権の成果について見ていきましょう。それはずばり中国における絶対的貧困の削減でした。
 中国は改革開放が始まった1978年末から2011年までのおよそ30年間に貧困を削減する事に努めてきました。中国国内で、世界銀行が絶対的貧困と定義づける水準で生活している人の数は1981年には8億4000万人(中国人口の84%)にも上りました。それが1990年には6億8900万人(同61%)、2002年には3億5900万人(同28%)そして胡錦濤政権時代の2011年には8400万人(同6%)にまで減少したのです。
 もちろん、胡錦濤政権単独の成果ではありませんが、中国における貧困の削減に2000年代のこの政権の農村政策が大きく寄与した事は間違いないでしょう。
 貧困問題が解決に近づけば、それだけ中国都市部も安心して地方からの労働者を受け入れやすくなるでしょう。そうすれば、結局は都市部の経済成長も促進される事になるはずです。その事を考慮すれば、都市部エリート達も胡錦濤政権が行ったの様な公共的な政策を高く評価するのではないでしょうか。彼らも中国の農村が抱える豊富な人材には関心がある筈です。貧困を解決する事はそうした人材を活用する機会を都市部に与えてくれるでしょう。

農村における今後の課題

 中国国内の絶対的貧困が過去40年間で大きく削減されてきた事は確かですが、実際にそれを可能にした要因の大部分は農村の人々が都市部の高賃金の職業で働く様になった事でした。つまり農村自体の暮らしはまだまだ改善の余地があるという事なのです。何せ現在でも中国の人口の半分は地方に暮らしているのですから、農村の生産性やその付加価値を高めていくことは今後も相変わらず重要であり続けるでしょう。

まとめ

 胡錦濤政権の農村政策の成果や、それに対する世間の評価を、農村における今後の課題も含めて見てきました。農村では農村収入が上昇し、また社会サービスが導入され生活の基本が確立された事で、それまでに改善されてきた絶対的貧困率は胡錦濤政権下で一層削減される事になりました。
 一方で都市部のエリート層は農村の暮らしを改善する政策などではなく、都市の改革を1990年代同様に継続して欲しかったらしく、その為この政権に対する彼らの評価は低い様でした。しかし膨大な人材を抱える中国において、農村の貧困問題を解決する事は回り回って都市部経済にもよい影響を与える事もまた事実の様です。






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