2020年9月17日木曜日

手頃さ指数で見る各国の住宅市場




はじめに

 中国の住宅市場では住宅価格の上昇が2003年から10年以上に渡って続いてきました。この原因として住宅民営化の初期において住宅価格が極めて低かった事、そして住宅供給量が極めて少なかった事がありました。その為、中国都市部の住宅価格が上昇を続ける事は自然であり、これはバブルではないと言う事が出来そうなのです。しかしこれについてはまだ考察の余地があります。
 そこで今回はアメリカ合衆国など、中国以外の国々で住宅が一般にどれ位手頃な買い物なのかを見ていくことで、中国の住宅市場の特性(はたしてバブルなのか)をより詳しく解説していきます。

アメリカ合衆国における住宅の手頃さ指数

 住宅民営化以降、中国都市部に住む世帯にとって、住宅の購入はとても簡単でした。それは彼らが政府による様々な支援や政府設定の格安の住宅価格を利用して住宅を購入できたからです。一方でそれら都市部の住宅の市場価格は上昇を続ける事になります。例えばですが、もしこの市場価格が世帯収入の10倍もの価格にまで膨らめば、それはバブルと呼べるかもしれません。しかしそれでも住宅民営化が行われてまだ間もなく、自由市場における十分な過去のデータを持たない中国ではバブルと正常の境界を明確に決める事が難しいのです。
 それではアメリカ合衆国など、中国以外の先進国では世帯収入に対してどの程度まで住宅価格が上昇すればバブルと呼ぶ事が出来るのでしょうか?一般に、「住宅価格 ÷ 世帯収入」で計算される“手頃さ指数”、つまり世帯にとっての住宅の購入のしやすさ、を見る事でバブルかどうかをはっきりさせる事が出来ます。この値が高ければ高いほどバブルの性質を帯びてくるという事です。勿論、国によってこの“手頃さ指数”は広く異なる値を示しており、一概に信用できる値ではありませんが、市場の状況を判断する上で考慮する価値はあると思います。
 アメリカ合衆国の住宅市場では、住宅価格の中央値が世帯収入の中央値の3倍以上になると、それは“危険”な状況と判断され、警告サインが発動します。バブルの危険があるという事です。この3倍と言う値は人口密度の高いアジアの国々の指数と比べると随分と低いものです。3倍程度で警告サインが出ると言うのは、アメリカ合衆国が、土地が安く、まばらにしか人が住んでおらず、財産としてあまり住宅を重宝しない国であることを示唆しています。この国の投資家たちは不動産以外にもさまざまな富の蓄え場所を持っているのです。金塊などはその一例でしょう。
 またアメリカ合衆国は住宅購入者に対し政府が莫大な支援を提供する国としても知られています。住宅を比較的購入しやすい国なのですね。

韓国、台湾の住宅の手頃さ指数

 それでは中国に極めて近い韓国、台湾などのアジアの国々ではどうでしょうか?これらの国々はアメリカ合衆国に比べて遥かに人口密度が高い事が大きな特徴です。また、韓国、台湾の政府は住宅購入者へ金銭面で支援する事が殆どありません。またこれらの国々では貴重な富の蓄え場所として不動産を非常に重視しています。その為、通常平均して住宅価格が世帯収入の6~8倍もあります。手頃さ指数=6~8という事です。
 アメリカ合衆国の住宅市場がたった3倍でも警告を発している事を思えば、この値がどれだけ高いかが分かります。それでもこれは韓国、台湾の住宅市場にとってはバブルなどではなく、極めて正常な値なのです。国によってどの値が正常であるかがこれだけ違うという事です。

中国の住宅の手頃さ指数

 では最後に、中国の住宅の手頃さとはどの位のものなのでしょうか?勿論、中国もアジアの一国ですから、先述の韓国、台湾の住宅市場の性質を同様に持っているでしょう。
 しかし、中国の場合、考慮すべきもう一つの特性があります。それは中国の都市世帯が2000年から2010年の間に住宅民営化によって棚ぼた的な莫大な収益を得ているという事、そしてこの期間、住宅の大部分は通常の世帯収入によってではなく、この住宅売却による棚ぼた収益によって購入されたという事です。つまり、近年の中国都市世帯の世帯収入と言った時に、その内訳として純粋に仕事によって得られた収入に比べ、不動産売買によって得られた棚ぼた収益が非常に大きく、その為これを先述の「手頃さ指数 = 住宅価格 ÷ 世帯収入」の式に入れて手頃さ指数を計算する事は方法としてあまりに無鉄砲なのです。
 少なくとも2000年から2010年の間の幾らかの年については“通常の比率”を計算する事が難しく、従ってバブルかどうかを判定する事も困難なのです。

まとめ

 アメリカ合衆国、韓国、台湾、中国について、その住宅購入の手頃さを具体的に指数で見てきました。
 アメリカ合衆国では「住宅価格 ÷ 世帯収入」の値が3倍以下で正常という事でした。これに比べて、韓国や台湾ではこの手頃さ指数が6~8倍でも正常という事が分かりました。
 こうした差は、その国の政府の住宅購入者への支援の程度の違いや、その国における不動産の財産的な重要度の違いなどが反映されていました。アメリカ合衆国では土地が安く、住宅購入支援が充実しており、また不動産以外の物を富の蓄え場所にしている投資家が非常に多かったのです。
 そして中国については、世帯収入を不明確にしていた住宅民営化による棚ぼた収益の為に、この手頃さ指数と言うのは不明瞭なものでした。自由市場として見るにはまだまだ謎が多い国という事でしょうか。








0 件のコメント:

コメントを投稿

はじめに 1.古い旅客鉄道網の閉鎖 2.儲かる路線と儲からない路線 3.高速旅客鉄道建設に渦巻く汚職 4.中国のインフラ建設汚職は如何にして防ぐ事が出来たか まとめ はじめに  中国のインフラ建設はアジア通貨危機が起きた1997年以降、加速度的に進められてきました。金融危機に対す...