はじめに
中国の住宅市場は高所得者向けの高級住宅市場と、低所得者向けの手頃住宅市場の二層に分かれてしまっており、前者は供給過剰、後者は供給不足の状態が続いてきました。この事を問題視した中国政府は高級住宅の供給量を抑制する為に、高級住宅購入の頭金やローン利率を高く設定するなどの措置を取りました。しかしこうした政策は売れ残り物件を早く売却したいと思っている市場の圧力に負け、2015年頃までには再び解除される事になります。
また政府は、手頃住宅の供給不足の問題については、低所得者向けに公営住宅を建設する計画を打ち立て、各地方都市にこの建設を命令する事で解決しようとしました。しかしこの計画も、財源不足や具体的な建設方法の欠如などが原因で、結局は高所得者向けの格上げ住宅へのリフォーム計画に様変わりしてしまう事が多かったのです。
今回は住宅市場の第二層の問題(低所得者向けの手頃住宅の供給不足)を解決するために立てられた公営住宅建設計画がどの様に堕落し、当初の目標から逸脱していったかを見ていきます。
3等、4等都市での公営住宅建設計画の実態
中国の都市はその世帯数や経済規模などの指標によって1等から5等まで等級が割り当てられています。勿論、1等都市と言うのは、ご存知の主要大都市である北京や上海などが該当します。上海ではこの公営住宅建設計画はスラム化した住宅をリフォームして格上げすると言う計画に様変わりしてしまいました。
では3等或いは4等都市の場合はどうでしょうか?これらの比較的経済規模の小さい都市では、状況はもっと悲惨でした。これらの都市は中央政府からの公営住宅建設命令に対し、都市中心からはるかに離れた安い土地に早急にいくらか見かけ倒しの劣悪なマンションを建てる事で対応しました。作りももろく、近場に購買施設は無く、交通手段も欠如していた為、こうした住宅に人が住む事は実質不可能でした。にもかかわらず、これら3等、4等都市は中央政府に“公営住宅建設任務完了”と宣言したのです。中身の無い、正に見かけ倒しの計画に成り下がってしまっていたのです。
公営住宅建設の為の財源は建設計画初期には殆ど用意されていませんでした。それでも先述の様に見かけ倒しの建設など、何らかの形でこの計画は遂行されてきました。
今日の公営住宅建設はどの様に融資されているか?
公営住宅建設の為の財源は建設計画初期には殆ど用意されていませんでした。それでも先述の様に見かけ倒しの建設など、何らかの形でこの計画は遂行されてきました。
では今日の公営住宅建設はどの様な方法で融資されているのでしょうか?まず中央政府から地方政府への譲渡金があります。それから地方の財源、債券、銀行ローンなどがゴタゴタに混ざった形でも融資されています。
これらの融資によって実に12もの異なる建設計画がバラバラに進行しており、とても明確な目標を持ったまとまりある計画とは言えない状況です。
また、これらの融資の内、中央政府からの譲渡金と言うのも地方政府にとっては負担となる場合が多い様です。地方が安心して管理できる財源ではないという事です。
さらに、銀行ローンを受ける際に地方の土地財産をバックアップとして利用しますが、その査定額が非現実的に高い事も問題とされています。もし地価がその査定額から急落したらローンはたちまち返済できなくなってしまうからです。
中央は相変わらず地方の事を殆ど考えていない様です。
結局、公営住宅建設計画は当初の低所得の人々が購入できる新しい住宅を多数建設する、と言う目標から逸脱し、貸し出し可能な既存の低質な住宅をリフォームによって格上げする事に注力する様になってきました。
低所得者向けの手頃住宅から高所得者向けの格上げ住宅へ
結局、公営住宅建設計画は当初の低所得の人々が購入できる新しい住宅を多数建設する、と言う目標から逸脱し、貸し出し可能な既存の低質な住宅をリフォームによって格上げする事に注力する様になってきました。
しかしこれはある意味で歓迎される事態ともいえるのです。何故なら、政府が初期に見込んでいた低所得者が住宅を購入する際に支払える前金の額が、現実のものより遥かに高かった事が徐々に明らかになってきたからです。低所得者は実際には手頃だとしても住宅を購入する様な金銭的余裕など殆ど無かったのです。そうであれば、高所得者向けに古びた住宅をリフォームし、格上げした上で売った方がよっぽど採算がとれるという事です。
低所得者向けの手頃住宅不足の改善など、中国都市部の住宅への要求を満たす事は今後20年あまりにかけて難しい課題になり続けるでしょう。
住宅問題における政府の役割と市場の役割
低所得者向けの手頃住宅不足の改善など、中国都市部の住宅への要求を満たす事は今後20年あまりにかけて難しい課題になり続けるでしょう。
公営住宅の建設を実現するという事は政府の役割が増えるという事です。そして高級住宅の供給過剰を抑制するという事は市場の役割を減らすという事です。この二つの方針を取る事で政府は住宅問題を解決しようとするでしょう。勿論、この政策には良い面も悪い面もあるでしょう。国が主導権を握るという事は結局都市偏重に舵を切る事に繋がり得るからです。そして都市偏重という事は政策が移住者や低所得者ではなく都市戸籍を持つ富裕層に有利に働くという事だからです。
しかしそれでも2000年から2010年の間、都市住宅のおよそ2/3が市場によって供給された、と言う事実を見ると、やはり今後は政府が大きな役割を持たなければならない事は明らかです。この内、残り1/3は公営住宅か、或いは政府機関や国営企業によって建てられたそれらで働く労働者向けのアパートでした。勿論、こうしたアパートは国から助成金を受けて建てられました。1/3と言う数字から、政府の役割がまだ小さかったという事が分かります。
低所得者向けの公営住宅建設計画が地方都市でどの様な形に変質して行ったかを見てきました。
まとめ
低所得者向けの公営住宅建設計画が地方都市でどの様な形に変質して行ったかを見てきました。
地方政府は中央政府からの公営住宅建設命令に一応従いはしたものの、実際に建てられていたマンションは劣悪で環境も悪く、とても人が住めるような建築物ではありませんでした。また、こうした堕落したまとまりのない建設計画への融資の仕方も多種多様で、頼りない地方の債券や銀行ローンを利用していました。
そして近年では強調されるのは低所得者向けの手頃な住宅を建設する事ではなく、徐々に高所得者向けのリフォーム(住宅格上げ)事業になって行きました。
今後も低所得者向けの手頃住宅の供給不足は問題になり続けるでしょうが、中国政府はおそらく政府としての役割を増やし、市場の役割を減らす事でこの問題を解決しようとする事でしょう。


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