はじめに
中国では1998年以降、住宅建設のブームと共に、インフラ建設も加速しました。これはその前年に起きたアジア通貨危機への対応として中国政府が財政刺激策を発動し、その中で特別債を利用してインフラ建設への支出を増大させた為でした。
それ以降、高速道路、大規模な港、発電所、インターネット、高速旅客鉄道などの建設が次々に行われました。こうした大規模なインフラの導入によって、中国における物流や人の流れは劇的に改善され、中国経済は一層の発展を見せる事になりました。特に上海港はそれまで輸出規模で世界19位でしたが、この大規模なインフラ建設後の2013年にはシンガポールを抜き、世界第一位の座にまで上り詰める事になったのです。
こうして世界一の輸出大国となった中国ですが、その背景にはインフラを過剰に建設する事で自分達の出世を叶えようとする地方政府の役人たちの欲望も潜んでいたのです。今回は中国におけるこうした派手なインフラ建設劇にどの様な原因があったのかを実際に建設されたインフラの種類なども交えて見ていきます。
近年重点的に建設されているその他のインフラ
冒頭でお話しした様に、1998年以降の中国のインフラ建設ラッシュでは、高速道路や港、発電所、インターネット、高速旅客鉄道などが建設・導入されました。
そして近年より重点的に建設されているのは都市部における地下鉄網や下水処理場などの比較的華やかさの無い種類のインフラです。華が無いと言っても生活には必需のものですね。地下鉄については2016年時点で中国国内の22都市で総延長3,000キロメートルが建設されました。
中国のこの大規模かつ急速な、そして時に贅沢とも言えるようなインフラ建設劇は何が動機となって引き起こされたのでしょうか?
インフラ建設の動機と過剰で浪費的な建設計画
中国のこの大規模かつ急速な、そして時に贅沢とも言えるようなインフラ建設劇は何が動機となって引き起こされたのでしょうか?
もちろん、都市化に伴う中国国内からのインフラへの正当な需要があった事は確かでしょう。中国の経済計画者達はこの急激な都市化に伴うこのインフラ需要の増加を必死に満たそうと努力していました。
しかし、インフラ建設ラッシュが起きた動機として正当とは言えないものも実際にはあったのです。後で詳しく述べますが、それら動機の中には地方政府の役人たちの出世欲もあったのです。そうした動機が重なってインフラ建設の規模や速度を強めました。できるだけ大量のインフラをできるだけ早く建てれば、中央政府からの自分達の評価も上がる、と彼らは考え、それを実行した部分がかなり大きいのです。
こうした動機は過剰で浪費的な建設計画を生む事がありました。そして中には設計や質の面で欠陥があると言わざるを得ないインフラもかなりあったり、また時には建設場所の周辺環境との調和が取れていなかったりもしました。
本来ならインフラ導入も運営開始後の採算が合わなければその建設を踏みとどまるべきでしょうが、中国の地方政府は経費と利益に関するこうした事前の綿密な分析を行わずにとにかくインフラ導入をしようとしている側面が強くありました。とにかく大規模なインフラを早急に建設しなければならない、と言ったプレッシャーがあったのでしょう。そしてこうしたプレッシャーを背景にした建設競争の中で地方政府は他の地方政府に負けじとインフラ投資に躍起になってしまい、採算をあまり考慮しなかったのです。
綿密な事前分析なしのインフラ導入
本来ならインフラ導入も運営開始後の採算が合わなければその建設を踏みとどまるべきでしょうが、中国の地方政府は経費と利益に関するこうした事前の綿密な分析を行わずにとにかくインフラ導入をしようとしている側面が強くありました。とにかく大規模なインフラを早急に建設しなければならない、と言ったプレッシャーがあったのでしょう。そしてこうしたプレッシャーを背景にした建設競争の中で地方政府は他の地方政府に負けじとインフラ投資に躍起になってしまい、採算をあまり考慮しなかったのです。
こうした安易なインフラ投資の理由として、2002年から2012年の異常に低い金利や都市化に伴い土地売却による利益が急激に上昇していた事が地方政府に非常に有利に働き、彼らが低コストでインフラを導入する事を可能にしていた、という事があります。
インフラ建設ラッシュと小都市の地位向上
前項で、低金利や地価の上昇が地方政府に容易なインフラ投資をさせていた事を見てきました。しかし、この他にもインフラ投資の動機として地方政府の役人たちの出世欲と言うのもあったのです。 どういう事か説明しますね。中国の管理階層の中で小都市が地位を高めるためには、その小都市はインフラ設備に関するある特定の基準(レベル)を達成しなければなりません。例えば地下鉄が何キロメートル走ってなければいけないとか、インターネットユーザーが何人いなければいけないとか、そう言う基準です。そしてその基準を満たす事でその小都市が階層中の地位を向上させることに成功すれば、それは同時にその小都市政府で働く役人たちの出世も意味するのです。だから役人達は自分達が出世するためにも必死にインフラを導入しようとしたという事です。
お役所的な刺激策という事ですね。インフラ建設にはこうした動機があった為、時にその建設計画が本当に必要かどうかという事が度外視されてしまい、ただ自分達の昇級の為に魅力的だからと言う理由だけで建設計画が実行に移されてしまう事が多々あったのです。
中国のインフラ建設ラッシュがどういった動機で行われて来たのかを見てきました。
まとめ
中国のインフラ建設ラッシュがどういった動機で行われて来たのかを見てきました。
動機の中には都市化に伴う需要を満たす為と言う正当なものもある一方で、2002年から2012年の異常な金利の低さや急激な土地売却価格の上昇などが地方政府にインフラ投資を容易に行わせていた事も事実でした。
さらには、中国の管理階層の中で小都市が地位向上を行う為にあるレベルのインフラ導入が必要であり、小都市の役人達がその小都市の地位向上に伴う自分の昇級の為に本当にそのインフラが必要かどうかを度外視して、とにかく建設を実行していた言う実態もありました。つまり地方政府の役人の出世欲がインフラ建設の動機の一部になっていたのです。


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